苦く 甘い香りのふところ

「おい、帰るぞ」

そんなこと言われても…

「助けに来てもらったところ悪いんだけど、先帰ってください」

「は?」

カッコ悪すぎて、動けないなんて言えない
でも、またふらふらして来た

「っ、ダメだ」

「っ、おい、おまえ、その体どうした、」

菅野は倒れそうになった体を支えてくれた

「ちょっと……変な薬嗅がされたみたいで、」

「はぁ、っしょ」
「えっ、ちょ、ちょっと、おろして」

人生初のお姫様抱っことやらをされてしまった、いや、されるなら、もっと王子様にしてもらいたかった、初めての男がこいつって。

まぁ、助けてもらったんだ、ありがたい

動かない私の体は、甘い香りの彼の懐で、目を瞑った
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