ピエリスの旋律


「そんなん言ってられるのも今のうちだと思うけどな」

「え、どういうことよ、それ」

「えー?女の勘ってやつ?」


私を馬鹿にしたように笑いながら、結った髪の毛先をくるくるともてあそぶ。
パーマでもかけたような綺麗なカールだけど、雨の日はいつもより広がるから嫌だと嘆いていた。

女の勘って、なに?
この先私が尾瀬くんを好きになるとでも?


「そういう美亜はどうなの。」

「え、私?好きな人いるよ?」

「え!!」


思わず大きな声が出て、近くにいたクラスメイト数人がその声に驚き、「どうしたの」と次々に声を掛けてくる。
どうもしないという風に手を横に振って、「ごめん」と軽く頭を下げる。

それにしたって。


「初めて聞いたんだけど、それ」

「うん、たぶん初めて言った」


目をぱちくりさせて、とぼけて言う彼女に、私はその場にうなだれる。

彼女らしいといえば、彼女らしいか。
このタイミングでの暴露とその態度は。

美亜にそういう相手がいるというのは今まで一度も聞いたことがない。
私には色々攻め込んで聞いてくるくせに、自分は興味がないとかで、恋愛関係の噂が立つことも一切なかった。
彼女のこの容姿だから、縁がなかったとかでは絶対にないはずで、実際に告白されている場面も何度か見たことがある。

今までの彼女を知っている分、好きな人が出来たというのは相当衝撃的なことだ。


「え、相手は聞いていいの?」

「聞いちゃダメー」

「何それひどくない?」

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