ピエリスの旋律


昼食の後、一人で女子トイレから出てきたところを尾瀬くんに呼び止められた。

それまで半日、触れるなオーラをずっと出していたせいで、やっと話し掛けられたって、安堵のような表情を浮かべている。

私はと言えば、だいたい尾瀬くんに何を言われるかの予想がついているので、聞くなよって感情が表にも出ていたと思う。

そんな私の顔を見て、彼は苦笑いをした。


「なんであの大学なの?」


まだ授業の開始には時間があるので、人気の少ない非常階段まで二人でやってきた。

彼といるのは目立つので、教室の真ん前で話して注目を浴びるようなことは避けたかった。
彼もそれは理解しているようで、私の提案をすんなり受け入れた。


「行きたいから?」


わざとらしく首をかしげる私に、また苦い笑いを浮かべる。


「どうしてそこで疑問符が付くの。本当に行きたくて、あの大学を目指してるの?」

「それって、尾瀬くんに関係ある?」


苛立ちから乱暴な言葉を投げてしまった。
私からの拒絶の言葉に、尾瀬くんは分かりやすく傷ついたような顔をする。

そんな顔しないでよ。
私にだって、いろいろあるんだから。

複雑な感情でもやもやしていると、「じゃあ、はっきり言うけど」って彼は口を開いた。


「どうしてあんなランク下の学校を受けるの?そこに4年間を費やすつもり?」

「え、なんでランク低いとか言えるの?私の成績知ってる?」

「期末の結果、ばっちり横から見えてたよ」


な、なんてやつだ。
人の成績を勝手に。

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