ピエリスの旋律


「だったら、あの大学がそこまで低いって思わないでしょ?私にはあれくらいでちょうどいい。それとも、自分と比べて嫌味でも言ってるの?」


そんなわけないっていうのは、私が1番分かっていた。
尾瀬くんが何を言いたいのかを理解した上で、わざと神経を逆撫でするようなことを言ってしまう。

彼はあからさまに嫌悪感を浮かべて、さっきまでの柔らかい雰囲気を消した。


「萩原さんさ、テストで本気出したことある?提出物だけ終わらせて、後は平均取ればいいやーって。いっつも中途半端で済ませてるよね。そんなので夢叶えられると思ってんの?」

「な、」

「勉強と歌は別って思ってるかもしれないけど、出来るのにやらないのはただの逃げだから。まぁ自分で、そのまま行こうって思ってるならもう何も言わないけど、あの大学なら今年受けても受かるんじゃない?」


それはあまりにもレベルが低過ぎるし、これからさぞ実のない1年を過ごすんだね。って。

私に向けられるのは、突き刺すような冷ややかな目。
とてもじゃないけど、もう言い返せない。言い返したら分かってるよな?とでも言いた気な視線を投げかけてくる。


私は勉強になんかやる気ないし、将来は歌でやっていきたいと思ってるし。
色んなことに手を抜いて、その全てが中途半端になってしまっているのも感じている。

でも、実際どうすればいいのか分からないんだ。
このまま大学に進んで音楽を続けるのか。大学ではない、音楽の学校に進むのか。それとも他に、選択肢があるのか。

どの道が、私の未来のためになるのか分からない。
そもそもこんな漠然とした夢…。

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