ピエリスの旋律
***
「さっきからずっと変な顔してるけどどうしたの?」
始業式からばっちり午後まで授業があったけど、普段よりは1時間は早く終わったことに乗じて、美亜と学校帰りにカフェに来た。
大きな通りに面したカウンター席に、二人で腰を下ろした。
そこからはコート姿で足早に行き交う人々が目に映る。
彼女の前にはカップに入ったホットのカフェモカ、私の前にはホットのロイヤルミルクティーが置かれている。
「んー…」
「何?なんかあった?」
「…私って、手抜いてるように見える?勉強とか、そこらへん」
美亜がその大きな目をぱちくりした。そして、真面目な顔をして一言。
「私にはそうとしか見えてなかったけど、まさか隠してるつもりだった?」
「まじか…」
思ってもみなかった言葉だったので頭を抱える。
一応は、そんなにやる気なく過ごしているわけではなかった。
それなりにやって、あんまり頑張らないでって、そんな感じ。
あ、それが手抜きに見えるのか…。
「まぁでも、他の人には分からないんじゃないかぁ。私はいつも栞のこと見てるからさ、そう感じるだけで」
「そっか。」
「誰かに言われたの?親とか?」
まぁそんな感じ、と言葉を濁す。
「でもそれも、悪いことじゃないと思うんだけどなぁ。人それぞれ、興味のあることは違うし。言い方悪いかもしれないけど、その人だけの人生だしね?どう過ごそうが、他人には関係ないじゃん」
その言葉が、ちょっと心に刺さった。
カフェモカをふうふうして、冷ましながら飲んでる猫舌の美亜。