ピエリスの旋律
「親御さんは栞に後悔してほしくなんだよ、きっと」
「どういうこと?」
「不完全燃焼って、もやもやして気持ち悪いでしょ?どうせやるなら色んなこと、納得いくまでやった方がスッキリするし。結果はどうあれね。栞の表情見て、そう感じてるんじゃない?」
私もそうだし、って窓の外に目を向ける彼女。
その横顔はちょっと微笑んでいて、こっちが見惚れるくらいに綺麗な顔だった。
もやもや、か。
確かに色んなことが中途半端で、ずっとくすぶった気持ちを抱えている。
勉強もそうだし、歌のことも。
実際のところ何が正解か分からなくて、路上ライブだってどうすれば人が立ち止ってくれるか楽しんでくれるか、分からなくて。
気が向いた時に歌いに行って、男性の楽曲ばっかりカバーして。
考えれば考えるほど、分からないって言い訳ばっかり。
そりゃあ尾瀬くんにあんなこと言われるわけだわ。
「でもそういう風に言ってくれる親って、正直羨ましい」
「え?」
「私の親って両親共働きで二人とも忙しくて、家帰ってくると疲れてるから、そんなに深い話とか出来ないの。そのことを二人して申し訳なく感じてるもんだから、私のこと褒める褒める。ちっとも注意してくれない」
そう、おかしそうに笑う。
「注意って、相手のこと見てないと出来ないし、時には喧嘩になるかもって覚悟でするものだから、相当愛されてんのね」
美亜の言葉に、胸がざわついた。