ピエリスの旋律
「美亜は志望校、何て書いた?」
「あ、今日の調査票?私はねぇ」
そう口に出したのは、この辺りで名の知れた難関私立大学。
普段から彼女が勉強と真面目に向き合ってるのは知っていたし、本当に立派な目標だと思う。
栞は?と聞き返されたので、尾瀬くんとのあれこれの発端になった大学名を告げると、彼女はニコッと笑ってみせた。
「私は、栞が後悔しないなら、どんな道でも応援してるからね」
その言葉がまた、自分の甘さを実感させる結果となった。
たぶん美亜は、私が明確な何かがあってこの大学を選んだわけでないっていうのを見透かしてる。
分かった上で、笑顔でそう言うんだ。
美亜も尾瀬くんも、こんなにも私の背中を押してくれようとしてるのに、私は。
情けないなぁ、ほんと。
「がんばらないと、なぁ」
ほとんど無意識に口から出た言葉だった。
美亜がその言葉を繰り返して、ふふって微笑む。
「私も頑張るから、一緒にがんばろ」
「美亜…」
「ちょっとは楽になった?」
本当に、このままの私じゃダメだ。
絶対夢なんて叶えられっこない。変わらなくちゃ。
一息吐いて、目の前のドリンクを口に含む。
ロイヤルミルクティーの甘さが心に染みた。
「うん、だいぶ。頑張る、頑張るよ私」
「うんうん、その意気!」
「大好きだわ、美亜」
あらやだ、告白ぅ?ってオネェ口調で私の肩をバシバシ叩いてくる彼女。
痛い痛い。でもこの明るさが、本当にありがたい。
彼女はいつも、私が迷ってる時に道筋を照らしてくれる。
こんなにも思ってくれる人が側にいるっていうのは、私は本当に幸せ者だ。