ピエリスの旋律

ただならぬ思いで彼女を見る。


「あんた、尾瀬くんを好きでもなんでもないんでしょ?彼の側にいるのやめてよね。あんたの居場所じゃないから。目障り。失せて」


だけど、彼女は歌のことに触れない。

どんなに私を責める言葉が含まれていようと、そんなのはどうだっていい。
どうやって私達が二人でいることを知ったのか分からないけど、どうやら歌のことは、知らない…?

黙り込む私に、刺すような冷たい目線を向ける。


「どう、今までのこと改めるの?自分の立場考えて静かにする気ある?」


これほど他人に敵意をむき出しにされることはまずない。
でもさっきから黙って聞いてたら、改めるとか静かにするとか。

言い返すのは良くないと、心の底では分かっているけれど、これ以上好き勝手に言わせておくのも癪に障る。


「…あなたに、言われる筋合いないんですけど」

「はぁ?本気で言ってんの?」

「今あなたに言われたこと、全部尾瀬くんに話すって言ったら、どうするつもりなの?」


その言葉に、彼女の勢いは止まった。
我ながら卑怯だと思うけど、なんとかこの状況を切り抜けたかった。

いつ彼が教室に戻るか分からない。
こんな馬鹿みたいなこと、さっさと終わらせたい。

何も言わずに唇を噛み締めて私を睨みつけているけど、私が彼にバラすだとか、そういうのは全く考えなかったんだろうか。
いや、こんなこと話す気にもなれないけどさぁ…。

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