ピエリスの旋律
尾瀬くんの気持ちは、分かるようで分からない。
優しくしてくれるし、私が舞い上がるようなことをさりげなく言ってきたりするけど。
彼の本心がどこにあるか、見えない。
「今日は一段と寒いね。ポケットの中でも手が冷えてる」
「ごめんね?長いこと待たせちゃって」
「いや、来週からしばらく来れないし、一緒に帰りたかったから」
この駅までの道が、永遠に続けばいいのにと思ってしまう。
そうすればずっと一緒にいられるのに。
さよならを言って、反対に向かう電車にそれぞれ乗り込む必要はないのに。
尾瀬くん、あなたは私をどう思ってるの?
「見て、オリオン座だ」
「あ、本当だ」
夜空を指す彼の指先を辿っていくと、こんなに明るい街中でもはっきり見える、その星座が光り輝いていた。
「私、星座ってオリオン座くらいしか知らないや」
「そう?結構天体って面白いよ」
「天体好きなの?」
好きだよって星を指差す彼の横顔を、私は一生でも見ていられると思ってしまう。
こういうちょっとしたことで、私の鼓動が早くなるなんて。
そんなのちっとも分からないんだろうなぁ。
私の気持ちを知ったら、どんな顔をする?
困る?笑う?
それとも、