ピエリスの旋律
最初は戸惑ったけど、結局はありがたいなぁってのほほんと彼の言葉を受け止めていた私。
彼がどんな思いで、どういう風に私を思って言ってくれていたなんて、考えようともしなかった。
美亜には、相手のことを考えないと注意なんて出来ないって言われたけど。
本当にその通り、なのかもしれない。
「私、尾瀬くんには本当に本当に、本当に感謝してるの」
その言葉に、彼は静かに顔を上げた。
こんな情けない表情の尾瀬くんなんて見たことない。
私は何も傷付いてなんかないのに、どうして泣きそうな顔をする必要があるの?
「尾瀬くんに言われてハッとしたし、同時に怖くなった。このままだと、ずっとくすぶったままだって」
そっと彼に笑い掛ける。
泣きそうになるまで思い詰めてたなんて、そんな悲しいことない。
だって、私はその正直な言葉に救われたんだから。
こうして充実した毎日を送りながら笑っていられるのは、あの言葉のおかげなんだから。
「ああして尾瀬くんが言ってくれなかったら、私が毎週路上に立つことも、成績を上げることも。そして何より来週のライブに出ることもなかったって考えると、そっちの方がもっとずっと怖いんだ」
尾瀬くんの瞳が揺れる。
あぁ、私は本当にこの人が好きだと思ってしまった。
人のことをこんなにも考えて行動して、それなのに責任を感じて自分を責めているこの人を、とても愛しく感じる。
どこまで優しいの。