ピエリスの旋律

私は必死に、この前CROSSに訪れた時のことを思い出していた。
眉間にしわを寄せて考えていると、「その顔やめた方が良いよ」って制されたのでやめた。

あれ、これ確か2回目。


「あ、ちょっと待って?」

「なに?」

「なんか、CDのポスター貼ってたかも。エントランスに」


そうだ、思い出した。
ライブ告知ばかりの中にCDの宣伝ポスターもあって、その一つが確かアンドロメダのものだった。
惑星を鮮やかにかたどったもので、目立つなぁって思ったから覚えてる。

でも、


「それだけ?」

「言うと思った」

「直筆サインとかもなかったの?」


そんなのなかった。

他に彼らに繋がりそうなものがあったかと頭をひねったけど、全然思い出せそうにない。
というより、恐らくそんなものは存在してなかった。あの場所に。

美亜がつまらなさそうな表情を見せる。
正直、私も同じような気持ちだ。


「なーんだ、所詮ネットの情報ねぇ。ガセか」

「当日、自分の目で確かめてみれば?たぶん繋がりそうなもの、なかったと思うけどなぁ」

「そうするわ」


美亜のふわふわした栗色の髪が風に揺れる。

ライブに出ることを報告した時、私が思わず引いてしまうくらいに彼女は喜んでくれた。
『絶対行くから!』って目を輝かせながら行ってくれた彼女を前にして、私は涙が出そうなくらいに嬉しかった。

こうやって私の背中を押して、応援し続けてくれる大切な友達。

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