ピエリスの旋律

「言ってなかったかもしれないけど、俺ら現役大学生。ちなみに全員同じ大学の4年生」

「…え、えええ」

「現役大学生バンド、めでたくここにデビュー。なんてね?」


衝撃の事実に目をぱちくりさせる。

20歳そこそこの年齢だとは思っていたけど、なぜか学生とは考えてもみなかった。
だって、倉田さんの髪の毛、こんなに明るい色だし、それにこの人達こんなに落ち着いてるし。

って、そんなところまで考えたけど、大学に髪色を取り締まる校則なんて存在しないし、落ち着いてる人なんていくらでもいるということに気付いて力が抜けた。

どうして今まで疑問を持たなかったんだろう。


「あ、あと俺と佐々木は、栞ちゃんの高校の先輩だからね」

「ええええ、もう何に対してもびっくりなんですけど…って、私高校名言いましたっけ?」

「初めて会った時にいた男の子と、同じ学校でしょ?制服見たから」


なるほど、尾瀬くんの制服…。
本当に、倉田さんの観察眼には驚いてしまう。


「あ、それってさっき栞ちゃんの隣にいた男前?なんかチューされてへんかった?」


慌ただしくステージを行き来する丸谷さんの言葉に、私は思わず吹き出した。
倉田さんが「汚いよ」って嫌そうな顔をする。


「なぁ?佐々木も見たやろ?」

「うん。キャーって思いながらガン見しちゃったごめん」

「え、ちょ、待ってください!されてませんから!な、何かの見間違いですから!」


私をからかったりしない佐々木さんまで、面白そうに笑ってる。

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