桜の咲く頃
しばらく歩いて大きな家に来た
この家には優しそうな
おじいさんとおばあさんが住んでいる
そして庭には僕の家の桜より
大きい桜の木が立っている
この桜が大好きで花が咲くと
必ず来ていた
それ以前によく遊びに来る家でもあった
「これはどう?違う?」
僕は隣の女の子に尋ねた
桜をじーっと見てからこっちを向き
首を振る
「でも綺麗な桜だね!」
その言葉に嬉しくなった
自分が褒められてるわけじゃないけど
なんだか誇らしく思えた
その時後ろから声をかけられた
「おや?今日は可愛いお客さんが二人もいるなぁ」
その聞き慣れた声に振り返ると
この家のおじいさんが立っていた
「おじいさんこんにちは」
僕が挨拶すると女の子は
ぺこっとお辞儀だけした
するとあたたかい「こんにちは」が
返ってきた
「桜をまた見に来たのかい?」
僕はその質問に頷く
するとおじいさんはにこにこして
僕を見た
本当に優しそうな顔をした
僕が初めてこのおじいさんとあった時も
同じように声をかけられた
最初はびっくりした
だって勝手にお家の庭に入ってしまったから
てっきり怒られるかと思ったから
でもそんな人じゃなかった
優しくてあったかくてとてもいい人だった
飴玉やクッキーをくれた時もあった
そして僕は昨日来た時と同じ質問をする
「ねぇおじいさん、おばあさんは今日もいないの?」
ここ最近、全くおばあさんの顔を見てない
会うとこの質問をしているけど
いつも具合が悪いと言われてしまう
だけど今日は違った
「実はね、おばあさん入院してるんだよ」
入院…?
本当に具合が悪いんだ…
大丈夫かな
僕の表情が曇ったの気付くと
おじいさんは大丈夫だと言った
「すぐ退院できるから大丈夫」
それなら良かった
ちょっと安心した時、あることに気付いた
僕の手を握る手に力が入っていた
微かだけど震えているような気もする
横を見ると女の子は俯いていた
こんなとこで話してないで
次のとこにいかなきゃ
そう瞬時に思った
とりあえずおじいさんにお別れを言って
その家をあとにした
「ごめん、話しこんじゃって…」
「ううん、大丈夫」
僕が謝ると首を振りながらそう言った
ちょっと元気が無いように見える
悪いことをしてしまった気分だった
最初はあんなに笑っていたのに
今は見るからに落ち込んでいる
どうしよう
そう思っていると
急に女の子が声をあげた