桜の咲く頃
少女から桜へ
「また2人でイチャイチャして〜」
私は先を歩くカップルを冷やかした
春花の反応が面白すぎる
それと
可愛い
「もう…!冷やかさないでよ!」
これで怒ってるつもりなんだろうけど、
ダメージはゼロ
痛くも痒くもない
春花は入学式の日、彼氏ができた
幼馴染みの俊くんというらしい
偶然席が隣で再会をはたした
入学式の日は一緒に帰る約束をしてたのに
教室に行くと春花の姿は無く
それも男子と帰ったと聞いた…
つまり
完全にすっぽかされたということ
あの日、何があったんだろう
春花に直接聞いてみると
「公園に桜を見に行ったの。すごく思い入れがあったから…」
ってよく分からないことを言い出した
桜…?
私が聞きたいのはそれじゃないんだけど…
「あの桜の木はね、何か不思議な感じがするんだよ」
私の意と反することばかり春花の口から飛び出す
そんなに言うなら見てこようかな
その桜の木を
私は中学生になる前にここへ引っ越して来た
だから公園には行ったことがなかった
春花と仲良くなったのは中学の途中から
でも桜の木なんて
どこにだってたくさんあるのに
不思議な感じってなんだろう?
何か起きるのかな
もしかして…
私も春花と俊くんみたいな出会いが…!?
いや、あるわけないか
そんなことを考えてるうちに公園についた
何かが始まる
そんな期待を少し乗せて
足を踏み入れた
私はまっすぐ桜の木に向かう
根元まで行って
その大きさと美しさに私は圧倒された
「こんな桜があったんだ…」
ぽつりと呟いた
しばらく眺めていた
だけど何も起きない
やっぱりそう簡単に不思議なことは起こらないよね…
そんなことを考えてた時
赤いゴムで二つに結ばれた栗色の髪を揺らしながら
小さな女の子が私の隣まで駆けてきた
桜をキョロキョロと見渡す
手には一枚の桜の栞を持っていた
「何か探しもの?」
私が尋ねると
「うーん…ここじゃない…」
私の顔も見ずに不思議な返答をされた
というか、呟いたようだった
え?どういうことだろう?
すると女の子はやっと私を見て聞いてきた
「お姉ちゃん、もっといっぱい桜があるとこ、知らない?」
「桜がたくさんあるところ?」
私は思わず聞き返した
この子は何を探しているんだろう…
少女の目はなんだか不思議で
引き込まれるような透明感があった
もしかして…
これが私の不思議な出会い…?