すきなひと
「満、もう着くぞ」
瞬の声は少しだけ低くて、いつも落ち着いている。そんな声を聞くと、私はいつも眠くなる。
「んん、」
私はもぞもぞと動く。
まだ、ぼんやりしている。
ナオちゃんのあの泣き顔を、私は忘れることがないだろう。
あれは、私とナオちゃんの約束だ。他の誰も知らない、二人の約束。
だけど、ナオちゃんに言われなくても、きっと私たちは変わらず、今日みたいに一緒にいただろう。
電車を降りて、少しだけ歩いたところ。高台にナオちゃんはいる。
お墓を目の前にして、瞬は表情を硬くしたように見える。色んなものが溢れてしまわないように。
私は、立ったままの瞬をチラリと見てから、ナオちゃんの前に座った。手を合わせ、目を瞑る。
ナオちゃん、久しぶり。元気?私は元気だよ。
瞬も。
この前瞬ね、優に身長を抜かされるってちょっと焦ってたよ。
そう、語りかける。ナオちゃんはきっと、聞いてくれている。そんな気がした。