すきなひと
よし、と目を開けて振り返れば、そこには瞬がいる。
寒いんだろう。
またポケットに手を突っ込んで、もぞもぞと動いていた。私が一歩下がると、瞬はさっきまでの私と同じようにしゃがみこんで、目を閉じて手を合わせる。
いつも、瞬とナオちゃんの会話は長い。今日は、いつもよりも長くなりそうだなと思った。
私は、何も言わない。邪魔をしないように、静かに2人の会話に耳をすませる。
瞬の横顔は、この前ここに来た時よりも、少しだけ大人になっている気がした。それを見て私は思う。
ナオちゃんは瞬をよろしく、って私に言ったけど。
瞬はもうずっと、私なんかいなくたって大丈夫なんだよ。
大丈夫じゃないのはきっと、私の方だから。