冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「リリアーヌさまがこんなにお上手だなんて!」


パンを成形したところでコールが思わずそう漏らすと、皆もうなずいている。

サノワではしばしばパンを焼き、父を亡くした子供たちに配っていたから、これくらい造作もない。


そのとき、廊下でバタバタと走り回るような足音がしだして、急に物々しくなった。
いつも静かな王宮では珍しいことだった。


「なにかあったのかしら?」


ガエルがそう言うと、コールが様子を見に行く。
すると、すぐに戻ってきた彼女は眉根を寄せた。


「なんでも、盗みを働いていた子供を捕まえたみたいです。そうしたさばきは王太子さまのお仕事ですから、宮殿に連れてきたようですね」


私にもわかるように説明してくれたけれど、『さばき』がどのようなものか気になる。
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