冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「あの、私、行ってまいります。パンお願いしますね」


かまどに入ったばかりのパンを気にしながら立ち上がると、「行かれるって……」とガエルが目を丸くする。

だけど私はすぐに調理場から飛び出した。

すぐさまうしろをついてきたコールに「お待ちください」と止められたけれど、足は止まらない。
ざわめきが起こっている方向へと進む。


「子供なんですよね。なにかわけがありますよ」

「そうかもしれませんが、盗みは重罪です。ここできちんとさばかなければ秩序か乱れます」


それもそうだけど……。
貧しい子供たちの面倒を見てきた私にとって、これは他人事ではない。


やがて宮殿の正面玄関にほど近い大きな部屋に到着すると、人だかりができていた。


「リリアーヌさま……」

「ヤニック、どうなってるの?」
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