冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
先に来ていたヤニックに尋ねながら覗くと、王太子さまの前に跪く少年が両脇を兵に挟まれ首を垂れていた。


「盗みを働いたのは認めるんだな」


シャルヴェさまの低い声に、皆が震えあがる。


「……はい。でも、もう家にはお金がないんだ」


歳の頃、七、八歳というところだろう。
栗毛の男の子がそう言うと「王太子さまに口ごたえは許さん」と兵に剣を向けられたから、息を呑む。


「盗みは重罪だ。この場で切り捨てられても文句は言えぬ」


切り捨てる? こんなに小さな子を?

シャルヴェさまがそう言いながら立ち上がり剣を手にするので、緊張が走った。


「処刑は見世物ではない。バスチュー以外は出ていけ」


彼がすさまじい形相でそう告げると、やじ馬となっていた護衛の兵たちは部屋から出ていった。

でも、私は足が動かなかった。
こんなに小さな男の子が処刑されるなんて、耐えられない。
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