冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
やっぱり彼はとびきり過保護だ。
彼は傷痕が残ることを盛んに気にしているようだけど……。


「大丈夫ですよ。隠していれば、傷痕もわかりません」


私は努めて明るい声でそう言った。すると……。


「キャッ」


シャルヴェさまは、横たわる私の手を握り覆いかぶさると、見下ろしてくる。


「お前は強い。だが、こんなに簡単に組み伏せられる」

「シ、シャルヴェさま?」


途端に激しくなる鼓動が彼の耳にまで届いてしまいそうだ。


「お前の心も同じ。強く見えるが、突然ぽっきり折れてしまうのは怖い。そうなってしまうのなら、俺には吐き出せ。そのために俺がいる」


本当に彼は優しい人だ。
芝居だったとはいえ、ついさっき怒りのオーラを纏い剣を抜いた彼とはまるで別人。


「ありがとうございます。本当は、不安なことも……あります」


私は思わずそう口走ってしまった。
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