冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「たしかに王太子さまは、リリアーヌさまにはとてもお優しく接してくださいます。ですが、リリアーヌさまはそもそも忠誠の証としていらっしゃっているのです」


それはつまり『人質』と言いたいのだろう。


「わかっているわ。でも私は、王太子さまを信じたいの」


あれほど優しい彼が、あの子を逃がしてくれた彼が……これから私にひどい仕打ちをするとは思えない。


「それに、あなたは最初からサノワに帰すつもりだったのよ」

「ですが……私はリリアーヌさまと一緒にここに来て、リリアーヌさまのお人柄に惚れました。この人になら、一生を捧げてもいいと」

「ありがとう、ヤニック」


最大の褒め言葉だ。

でも、ヤニックの人生を縛りたくはない。


「ヤニック。私のことを思ってくれるなら、ひとつお願いがあるの」

「なんでしょう?」

「母を……サノワでひとりになってしまった母を、お願いできないかしら」
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