冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
私が男を連れて歩きはじめると、門兵は戻っていく。

しばらく進んだところで、うしろを歩く男が突然口を開いた。


「ずいぶん簡単だった」

「なにかおっしゃいました?」


なんと言ったのかはっきりと聞き取れず振り向くと……。


「キャッ」


その男に、喉元にナイフを突きつけられてしまった。


「あ、あなた、誰です?」

「驚いたな。腰でも抜かすかと思ったが、話す余裕があるとは」


男は不敵な笑みを浮かべ私を睨みつけてくる。
その目は冷たく、背筋が凍りそうだった。


「王太子のところに案内しろ」


私は男の姿を観察して、冷静に考えた。

ナイフを持つ男の右肘を外にはじけば、隙が生まれる。
その間に逃げ出せるかもしれないけれど……それは体力のあるときの話だ。
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