冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
今はまだ完全に体のキレが戻ってはおらず、おまけに長い丈のドレスが走るのに邪魔になる。


「なにをしている。早くしろ」

「わかったわ」


とりあえず、要求に従うフリをすることにした。

私は誰かが気がつくことを祈りながら、わざとゆっくり歩いた。
シャルヴェさまがいると思われる部屋から遠ざかるように。


でも静まり返った王宮は、誰も出てきてくれない。

この時間なら調理場に行けば、コールたちがお茶をしていることはわかっていたものの、あそこには女性しかいない。
巻き込むわけにはいかない。

私は北の塔のほうへと足を進めた。


「おい。どこまで行くんだ」

「もう少しです」


男は長い廊下を延々と歩き続ける私をおかしいと思ったのか、首の前に突き付けていたナイフを皮膚に押し付けてくる。
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