冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「やめてください」

「随分肝のすわった女だな。お前、嘘をついているだろう。死にたいのか!」

「王太子さまは、あなたのような無礼者には会ったりしません」

「なにっ……ウッ」


これ以上は無理だ。

私は一瞬男が気を抜いた隙に、みぞおちを肘で殴り、その手をかいくぐり走り出した。


「クソッ」

「ヤニック! バスチュー!」


そして、誰かが気づいてくれないかと、必死に大声を張り上げる。

だけど、シャルヴェさまの部屋の近くには護衛の兵が待機していても、人気のない北の塔になんて誰もいるはずがない。


「エドガー! 誰か……」


それでも必死に声を張り上げ叫び続ける。
けれど、やはり長いドレスが邪魔をして、足がもつれてすぐに捕まってしまった。


「手間をかけさせやがって! 素直に王太子のところに連れていけば、命は助けてやったのに」
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