冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
壁に押し付けられ、再び喉元にナイフを付きつけられたものの、ひるんだりはしない。

シャルヴェさまのところに連れていくわけにはいかない。
彼はこの国に必要な人だもの。


「あなたはなぜ、王太子さまに会いたいのです?」

「そんなもの、決まっている。命をいただくのさ」

「なぜです?」

「なぜって……」


私の質問に男は「ハハハ」と笑い出す。


「シャルヴェの命をいただけばこの国は亡びるであろう」


つまり、すべての指揮権を持つシャルヴェさまを狙い、ユノヘスを混乱させようとしているのだろう。


「王太子さまは、あなたでは殺せません」


こんな姑息な手を使う男に、負けるわけがないわ。


「なにっ!」


私の態度に激高した男は、ナイフを横にすっと引く。
すると首に痛みが走り、床にポトリと鮮血がこぼれた。
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