冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「さあ、どうやって殺してほしい? じわじわ逝きたいか?」


焦ってはダメ。
まだ逃げるチャンスがあるはず。

私は必死に自分にそう言い聞かせ、平静を装った。


「私は誰かを傷つける人が嫌いです」

「お前、自分の立場がわかっていないようだな」


男がニヤリと笑った瞬間……。


「その手を離せ」


私はその低い声に息を呑んだ。
それがシャルヴェさまの声だったからだ。

どうして……。
一番来てはいけない人が来てしまった……。

私は焦った。

シャルヴェさまは剣の達人だと聞いている。
でも、私が捕まっていては不利だ。


「これはこれは。王太子直々においでになるとは。この女を殺されたくなければ、その剣を捨てろ」


シャルヴェさまは、私の首筋の血に気がついたのか、目を見開き唇を噛みしめる。
< 180 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop