冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
必死に落ち着こうとしたのに、声が震えてしまった。
それに……。


「あっ……」


シャルヴェさまの手が真っ赤に染まっているのを見て、思わず顔をそむけてしまった。


「すまない。お前は争い事が嫌いだったな」


彼は自分の手を見て、私から手を離す。


「シャルヴェさま! ご無事ですか!?」


そのとき、ようやくバスチューが駆けつけてきた。


「あぁ。リリアーヌがケガをしている。すぐに手当てを。コールを呼んで、着替えも」


シャルヴェさまは血に染まったドレスに視線を送ると立ち上がり、それだけ言い残して去っていく。


私、なんてひどいことを……。
助けてもらったのに、彼を拒否するかのような態度をとってしまった。


「シャルヴェさま……」


私の声は届かなかったのか、彼が振り向くことはなかった。
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