冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
バスチューは王宮の北の塔に何度も上り、軍が帰還しないかいつも見ていた。

すると、シャルヴェさまが王宮を出てから六日目の朝……。


「リリアーヌさま!」


部屋で仮眠をとっていた私のもとに、バスチューが慌ただしく走り込んで来た。


「どうしたの?」

「兵がひとり、こちらに向かっているのが見えます」

「兵が?」


私はドレスの裾をたくし上げ、バスチューと共に王宮の門まで走った。
するとすぐに息を切らせた兵が走り込んで来た。

その様子を見て、息を呑む。

まさか、シャルヴェさまになにかあったの?


「伝達のために参りました。報告いたします」


バスチューの前にひざまずいた兵は、息を整えながら口を開いた。


「シャルヴェ王太子さまが、イヤールド国国王の首をおとりになられました」

「本当か?」


バスチューが思わず声を上げると、兵は大きくうなずく。
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