冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「どうして謝るの? あなたはユノヘスのために戦ってくださったの。私が頭を下げなければ」


私がそう言うと、水を運んできたコールがにっこり微笑んでくれた。


それから数時間して――。


「戻って来たぞ!」


宮殿の警備をしていた兵が大きな声を上げる。
もう大広間には医者もそろい、すっかり準備が整っていた。

やっと、シャルヴェさまに会える。


「リリアーヌさま」

「はい」


バスチューに促され門まで行くと、目頭が熱くなり始める。

シャルヴェさまは私を見てなんと言うだろう。
なぜサノワに帰らなかったんだとお怒りになるかもしれない……。

それでも、ヤニックをひとりで帰したことを少しも後悔してはいない。


「来ました」


やがて宮殿の前にある緩やかな坂道を、暴れ馬を見事に乗りこなすシャルヴェさまの姿が現れた。
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