冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「あっ……」


張りつめた緊張から解放されたからか、立ち上がった瞬間力なくよろけてしまうと、シャルヴェさまはすぐに手を伸ばし抱きとめてくれた。


「シャルヴェさま……」


彼は、ポロポロ涙をこぼす私を見て眉根を寄せる。


「すまぬ。汚れた手だ」

「いえ……。シャルヴェ、さま……」


私を離さないで。
もう二度と置いていかないで――。


私は離れようとす彼の首のうしろに手を回し、ギュッと抱きついた。

王太子として君臨する彼に対して、大勢の前でこんな行為は失礼だったかもしれない。
でも、もう止められなかった。

けれど、その心配をよそに彼は私を軽々と抱き上げ、歩き始める。


「じゃじゃ馬は、帰らなかったんだな」

「はい。じゃじゃ馬でもシャルヴェさまのそばに置いていただけるでしょうか?」


「フッ」と優しい笑みを漏らした彼は、それから部屋に着くまでなにも話さなかった。
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