冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
もう一度、彼の部屋を訪れるとは思っていなかった。
前回はもう二度と彼に会えないと思いながら、虚しさいっぱいでこの部屋を去ったのだから。

私をベッドに座らせたシャルヴェさまは、重い鎧を脱ぐ。


「シャルヴェさま、おケガは?」

「あぁ、少し切り傷があるくらいだ」


そう言いながらボロボロになった上半身の衣服を脱ぎ捨てた彼の体には、無数の新しい傷がある。


「少しではありません。すぐに治療をしなければ。薬草を持ってまいります」


私がそう言いながら部屋を出ようとすると……。


「行くな」


彼の大きな手が私の腕を引きとめた。


「どうしてですか? 治療しなければ……」

「こんな傷、すぐに治る。それより……お前にここにいてほしい」


彼がそう言った瞬間、私は彼の腕の中にいた。

戦いで疲れているはずなのに、彼の腕の力は強く、そしてその胸は温かかった。
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