冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「もうひとつ、重要なことを忘れていた。俺は欲深い。一度捕まえた女は、決して離さぬぞ」


シャルヴェさまはそう言いながら私の頭を抱えるようにして、いっそう強く抱きしめてくれる。


「離さないで、ください」

「いいのだな?」

「……はい」


耳に伝わる彼の鼓動がドクドクと速い。
それに呼応するように私の鼓動もこれまでにないほどに激しく、そして速く打ち続けていた。


「お前に別れを告げたとき、どれだけ苦しかったか……」

「シャルヴェさま……」

「あんなに辛かったのは初めてだった。今までどれだけ背中の傷を見た女が逃げ出していっても、世継ぎを作れないことに落胆はしたが、辛くはなかったのにな」


それを聞き、彼からそっと離れて背中に回る。
そしてあの傷にゆっくり触れた。
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