冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「もう、痛くはないのですか?」

「あぁ。大丈夫だ」


彼がそう言った瞬間、私はその傷に頬ずりをした。

この傷は、彼が生きている証。
それならば愛おしい。


「リリアーヌ?」

「シャルヴェさまに傷があってよかった。そうでなければ、もう別の妃がいたかもしれないんですもの」

「まったく、お前というヤツは……」


シャルヴェさまは苦笑いしながら、私の手を取り、真剣な眼差しを向ける。


「今後、お前以外の妃は娶らぬ」

「ですが……」

「じゃじゃ馬で手いっぱいなのだ。お前にだけ、愛情を注ぎたい」


彼のその言葉に、じわじわと涙が溢れてくる。


「私、だけに?」

「なんだ、不服か?」

「そんなわけ、ありません」


私はうれしくて、泣きながら笑った。
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