冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
一歩間違えば、私は殺されていたかもしれないのだから、ヤニックがそう言うのも無理はない。
でも、どうしても殺せない。


「ヤニック、バスチューがケガをしています。すぐに治療を。ほら、お前たちはもう行きなさい」


ひげ男以外の敵国の男が、一歩二歩とあとずさりしたかと思うと、足早に去っていく。


「あなたも」


私が首元の剣を外すと、ひげ男はその場に座った。


「憐みなどいらぬ。殺せ」


ひげ男がそう言ったとき、その様子を見守っていたヤニックが駆け寄ろうとしたのがわかり、私は手で制した。


「だから殺さないと言っています。国に帰られよ」

「女ごときに足をすくわれ、どの面を下げて帰れるものか」


――バシッ!

ひげ男のその言葉を聞き、私は思わず頬を平手打ちしていた。
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