冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
それが敵国のこともあれば、権力争いで身内に……ということもあり得る。
自分の身を守るための最低限のたしなみだったのだろう。


「なるほどな。危険な目に遭ったことは?」

「いえ、まったく。私は子供たちと楽しく暮らしておりましたし、ここに来るように言われるまで、王宮にすら行ったことはありません」


思えば、王宮で暮らしたいとか、それなりの地位が欲しいといった欲求がまったくなかった。


「それがよかったのかもしれぬ。それなのに、平穏な生活を壊してしまったな」


彼はそう言うけれど、私は首を振った。


「でも、シャルヴェさまに出会えましたもの」

「リリアーヌ……」


怖い目にもあった。
辛い思いもした。

でも……シャルヴェさまに出会えた喜びが、それらをすべて上回っている。
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