冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「そのようなことをなさらないでください。リリアーヌさまをこのような場所にお出しすべきではなかったのに……」


それが普通の感覚なのかもしれない。
でも私は、ごく一般の庶民と変わらない生活を送ってきたが故、誰かに守られることには慣れていない。


「いえ。私が勝手に出てきたんです。それより、バスチューを馬車へ運んでください」

「はい」


見れば馬車は壊されていて、もう走れそうにない。

ヤニックと他のふたりがバスチューを馬車に運び入れたけれど、腕からの出血がひどくてバスチューの顔が青ざめている。


ここには治療できる道具はなにもない。

どうしようかと考えあぐね……さっき切り捨てた服をさらに引き裂き、彼の腕を縛り上げた。


「心臓に近いところを縛れば出血は収まってくるはずです。あとどれくらいでユノヘスに着きますか?」

「馬車はもう無理です。馬で走れば二時間ほどかと思いますが、リリアーヌさまをお乗せするのは……」
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