冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
護衛のひとりが戸惑いながらそう口にしたけれど、乗馬には自信がある。
小さい頃からいつも乗っていたからだ。
「それならすぐに行きましょう。ヤニック、バスチューを乗せられる?」
「はい、できますがリリアーヌさまは……」
「私はひとりで平気よ」
「は?」
私はヤニックが目を真ん丸にして驚いているのを見て、王宮で暮らすような姫君は、馬に乗ったりしないことを知った。
馬は四頭。
ヤニックがバスチューを乗せ走り出した。
「リリアーヌさま、お気をつけください」
ヤニックが私を気遣ってくれるけれど、このくらいお手の物。
いや、馬車で退屈しているより、こうして風を感じながら走っているほうがすっといい。
「大丈夫よ。それよりバスチューは平気?」
「はい。ご心配には及びません」
バスチューの意識ははっきりとしていて、馬に乗るのも支障がなさそうだ。
どうやら命にかかわるような傷ではなかったと胸を撫で下ろしたけれど、一刻も早く治療を受けさせたくて、先を急いだ。