冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「だからシャルヴェがその代わりをしてきたのね」

「そうだ」

「でも、どうして? 今、王位継承をするなら、もっと前にしておいてもよかったのでは?」


私は素直な疑問を彼にぶつけた。


「俺は世継ぎを作ることが無理ならば、バスチューに国王の座を譲ろうと考えていた」


彼は以前にもそんなことを口にしていたけれど、本気だったんだ。


「今までの妃候補は、俺の傷に怯えただけではない。忌まわしい過去の話を聞き、自分も母や兄のように消されるのではないかと恐れた」

「そんな……シャルヴェがそんなことを許さないのでは?」


私がそう返すと、彼は大きくうなずいた。


「もちろんだ。リリアーヌのことはこの命に代えてでも、生涯守り通す」


私は彼を信じている。
だから怖いとは思わない。


「シャルヴェ」


私は思わず彼に抱きついた。
思っていたよりずっと深い悲しみに苦しんできたであろう彼を癒やしたかった。
< 311 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop