冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「ご苦労だ」

「はっ」


シャルヴェに頭を下げた兵は、それを合図に階段を下りていく。


「どうしたんですか?」

「ここに誰かが入るときは、階段の下で待機だと決まっている」


どうやら徹底的に国王さまの姿は見せないように決まっているようだ。


「リリアーヌ。なにがあっても驚くな」

「えっ? ……はい」


どういうこと?


「行くぞ」


シャルヴェから意味深な言葉を聞いた私は、少し緊張しながら彼に続いた。

ドアから一歩入ったその部屋は、ひんやりとしていて静かすぎる。
最初の部屋にはいくつかの立派な調度品があるだけで国王さまの姿はない。

その奥にもう一枚ドアがあり、シャルヴェはそれをノックした。


「ジルベールです」


ジルベール?
自分の名前とは別の名を名乗ったシャルヴェに驚き見上げたけれど、彼の表情は少しも変わらない。
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