冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「入りなさい」


もうシャルヴェのことも認識できないような状態だと聞いていたのに、国王さまの受け答えは意外にもはっきりしていた。


「お食事をお持ちしました」


大きなベッドに横たわっていた国王さまは、少し痩せ、きちんと整えられた白髪が印象的。

目元が少しシャルヴェに似ている。
けれど、枕元に置かれたランタンが目尻に深く刻まれたシワを一層際立たせていた。

病に伏せっていると聞かされていたものの、身なりはきれいに整えられていて、顔の艶はいいようだ。


「今日はなんだ」

「はい。今日はトマトのスープがございます。お好きですね」


国王さまはトマトがお好きなんだ。


「そうか。私はパンが食べたい。最近のパンは柔らかくて甘い」


その言葉を聞いて私はうれしかった。
コールやガエルと酵母を研究して、もっとおいしいものをと試行錯誤してきたからだ。
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