冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
私には先に階段を下りていくシャルヴェの背中が寂しげに見えてしまう。


「リリアーヌ。それを片付けたら部屋に」

「はい」


私は調理場に食器を置くと、すぐにシャルヴェのもとに走る。


「シャルヴェ!」


護衛の兵の間を駆け抜け、ノックもせずに部屋に飛び込むと、彼は目を丸くしている。


「まったく、じゃじゃ馬は直らないらしいな」


シャルヴェは呆れ声を出しながら、それでも私を抱きとめてくれる。


「だってシャルヴェはじゃじゃ馬が好きなんでしょう?」

「あぁ、じゃじゃ馬が女になる瞬間がな」


そして私に熱いキスを落とした。


「もう!」


唇が離れると、恥ずかしさのあまり顔をそむけて不貞腐れてみせたけれど、彼はかまわず腕の中に閉じ込めた。


「驚いたか?」

「……はい」


正直にそう言うと、彼は私の手を引きベランダに出る。

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