冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
南の空には、上弦の月。
その月明かりはほんのり青白く、優しい光を私たちに届けてくれる。


「星がきれい……」


今日は空気が澄んでいて、星がいつもよりたくさん瞬いている。
私が思わずそうつぶやくと、彼は私の腰を抱いた。


「本当だ」

「ジルベールさまは、どの星かしら」


私の漏らしたひと言に、彼はふと苦しげな顔を見せる。


「ジルベールはここにいるんだ」


彼のそんな言葉を聞き、胸が締めつけられるように苦しくなった。


「いつからですか?」

「うん……」


彼は私の質問にすぐには答えず、再び空を見上げて大きく息を吸い込んでから口を開いた。


「母と兄のジルベールが亡くなって、父はしばらく部屋から一歩も出てこなかった。俺はひどいヤケドを負い、生死の境をさまよっていたから、それすら知らなかった」


シャルヴェはゆっくりと言葉を噛みしめるように話す。
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