冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「そばに寄り添っていてくれたランシャンが言うには、その間父は食事もとらず、ひたすら涙を流し続けたそうだ」


そこまで言うと、彼は顔をゆがめ視線を落とす。


「おそらく、愛する者をふたりも一度に亡くしたことに心が耐えきれなかったのだろう。母の死は受け入れたものの、自分の跡を継がせると溺愛していたジルベールの死はどうしても受け入れられなかったようだ」

「でも……」


シャルヴェだって同じ血を分けた子。
いくら王位継承権がジルベールさまのほうが上だったとしても、同じように大切だったのではないだろうか。


「父に初めて『ジルベール』と呼ばれたときは、殺したいほど憎かったよ。俺はいらない存在だったのかと」


彼の硬く握った拳が微かに震えている。
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