冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
かつて、私が正妃の子ではないと知れてしまったとき、『お前は俺と同じなのかもしれぬ』と彼はつぶやいた。

彼は正妃の子ではあったけれど、その存在を抹殺されてしまった身。
私と同じ寂しさを抱えていたのかもしれない。


「でもランシャンは言うんだ。国を守るという責務を負う国王にとって、世継ぎを守るということは一番の任務。王位の第一継承者だったジルベールを守れなかったという後悔と懺悔でそうなってしまったのだと。決して俺のことが嫌いだったわけではないと」


そうはいっても、彼の胸の内を考えると、辛くてたまらない。

私は彼の胸に頬をあて、ギュッと抱きついた。


「俺は小さい男だ。ジルベールと呼ばれることに慣れるまでは時間が必要だった」

「小さくなんてありません!」


私は一旦離れ、彼の目をしっかり見つめて首を振る。

夜風がシャルヴェの美しい金色の髪をフワッと煽った瞬間、彼の瞳にきらりと光るものが見えた。
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