冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
それでも、シャルヴェからの精いっぱいの愛を感じ、自然と笑みがこぼれる。


「リリアーヌさま!」


そのとき、まだ甲高い子供の声が耳に入り、その方向に目を向けると……。


「シャルヴェ、あの子……」


私が見つけたのは、火事のときに助けた男の子だった。


「エドガー、あの子を呼んで来い」

「かしこまりました」


エドガーにそう指示をしたシャルヴェは、もう一度集まった国民を見渡し手を挙げてから中へと戻った。


「リリアーヌさま!」


見晴らし台から下りると、あの男の子が駆け寄ってくる。


「あぁ、よかった。元気なのね」


私は男の子を抱き寄せた。

助かったとは聞いていたけれど、そのあとどうしているのかは知らなかったので、こうして元気な姿が見られて、感動だ。


「リリアーヌさま。僕のせいでヤケドをしてしまったと聞きました。ごめんなさい」

「そんなことをあなたが気にする必要なんてないのよ。泣かないで」
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