冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「シャルヴェ、辛かったでしょう?」

「辛くはないさ。リリアーヌに出会えたのだから、他のことなどちっぽけなことだ」


彼の曇りのない表情に、少し安堵した。
彼は己の運命すべてを受け入れのだ。


婚姻の儀が滞りなく終わり、コールに手伝ってもらって着替えを済ませる。

そして、ホッとした気持ちでふと窓の外を見ると、あの木が――初めてここにやって来たあの日登った木が――視界に入った。


「リリアーヌさま、お疲れさまでした。本当におきれいで……こうしておそばでお世話させていただけることを誇りに思います」

「コール、ありがとう。これからもよろしくね」


私が手を差し出すと、コールはその手をしっかり握り、瞳を潤ませる。


「リリアーヌさま、お体に触ります。もう休まれては?」

「そうね……」


私はそう言いながら、再びあの木を見つめた。
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