冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
コールが部屋を出ていくと、私はこっそり部屋を抜け出した。

シャルヴェは今頃、ランシャンやこの日のために戻ってきてくれたバスチューと話をしているはずだ。

王宮の玄関には、以前より増えた門番。
私が襲われたあの日から、いっそう出入りが厳しくなった。でも……。


「リリアーヌさま、どちらへ?」

「少し外の空気が吸いたいの。すぐに戻るわ」


門番の目を盗んで外に出たあのときとは違う。
ユノヘスの国民となり、王妃となった私をとがめる者はいなくなった。


「承知しました。ですが、中庭まででお願いします」

「わかっているわ」


中庭で十分だ。
私の目的はあの木なのだから。


私は誰も見ていないことを確認したあと、長いスカートをたくし上げ、木に手をかけた。
少し登りにくい木ではあるけれど、木登りの名人と言われた私にとって、どうということはない。
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