冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
「もう、スカートが邪魔」


途中で裾を踏み、足を滑らせそうになったものの、そこは抜かりない。
そうなることも想定してきちんと手で枝をつかんでいたので、問題なかった。


「やっぱり美しい」


眼下に広がるユノヘスの街。
どこまでも果てしなく続く広大な土地には、小麦だろうか、黄金の絨毯が広がっている。

きっとシャルヴェなら、この国を守ってくれる。
私にはそんな確信があった。


「リリアーヌ。やっぱりここか」


すると、下からシャルヴェの声がする。


「どうしておわかりになったのですか?」

「じゃじゃ馬はひとりでは手に負えぬ。門番にリリアーヌが出ていくときは必ず俺に知らせるようにと言ってあるんだ」


それは知らなかった。

彼は話をしながら、ガシガシと登ってくる。
ランシャンの目を盗んで、バスチューと一緒に抜け出したりもしたという彼にとっても、この木を登ることくらい造作もない。
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