冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
まさか人質として差し出された姫が、サノワにとってたいして大切な人間ではないと王太子さまに知られるのは、得策ではない。

もうすでにコールに頭を下げ、それをとがめられていた私は、これ以上の失態は許されないと、言葉を濁した。


「もうひとり若い……」

「エドガーですね。彼はランシャンの息子で、頭脳明晰なんですよ。戦術を立てる際には王太子さまも頼りにされています」


息子なのね。
そういえば、口元がちょっと似てたかも。


「リリアーヌさま。このすももは我が国の自慢の果物です。甘酸っぱくて病み付きになります。お召あがりください」

「ありがとう」


紅茶を口にしていた私は、コールに勧められるがままにすももにかじりついた。


「酸っぱーい」

「そうですか? すももは皮が酸っぱいので、食べにくければ皮をお剥きします」
< 61 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop