冷酷王太子はじゃじゃ馬な花嫁を手なずけたい
それに、ヤニックとバスチューのことが気になって仕方ない。


「コール、ごめんね」


私はコールへの謝罪の言葉を口にしながら、持ってきた小さな荷物をベッドの上に広げる。


「やっぱりこうでないと」


そしてドレスを脱ぎ捨て、いつも剣術の練習のときに使っていたズボンに着替えた。

足にピッタリとフィットするズボンをはき、膝のあたりまである長い上着を纏う。
腰にベルトを巻けば、長めでも動きは妨げられない。


私には男のように力がないので、俊敏さこそが命。
実際、兵に襲われたときも、力は一切使っていない。

だから、万が一に備えて、動きにくい服装は言語道断だった。


私は着替えをすませ、そーっと重い部屋のドアを開け、廊下の様子をうかがってみる。


安全のためできるだけ人を排除していると聞いたけれど、それにしてもしーんと静まり返っていすぎて、不気味なくらいだ。
< 64 / 348 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop